A•SO•BI日和

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「倒錯のロンド」がすごい!

 

 倒錯のロンド(完成版)を読んだ。

 

 著者は折原一で、講談社文庫から出版されている。

 

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(ここから先、ネタバレ注意)

 

 

 

あらすじ

 主人公の山本安雄は売れない小説家で、推理小説新人賞を獲るため、執筆活動に明け暮れていた。そんな中で完成した「幻の女」。自身最高傑作のこの作品で受賞を確信するもひょんなことから白鳥翔と名乗る人物に盗作されてしまう。挙句の果てにその作品が推理小説新人賞を受賞してしまい、そこから山本安雄とその盗作者、白鳥翔の熾烈な争いが勃発する。

 

 ・・・というあらすじである。

 

「倒錯のロンド」との出会い

 この作品を読むにあたったきっかけは、たまたまネットで見かけた記事である。私は推理小説が好きだ。これまでも伊坂幸太郎綾辻行人松本清張などの小説を読んできた。いろんな推理小説を読破していこうとネットで探していたら、たまたまこの「倒錯のロンド」に辿り着いた。小説家折原一の存在もここで初めて知った。

 まず、「倒錯」とは何か?

 

「さかさになること。また、さかさにすること。特に、本能や感情などが、本来のものと正反対の形をとって現れること。」(デジタル大辞泉)

 

と出てくる。この本では「さかさ」という意味の「倒錯」「盗む」という意味の「盗作」、同じ読みの2語をキーワードに物語が進んでいく。

 タイトルだけ読むと一見よくわからないかもしれない。「さかさ」が一体、物語にどう影響していくのか、私も初めは謎だった。

 本書を読んだとき、私はペラペラと捲りが進んだ。読めば読むほどこの小説の世界観にどんどん引き込まれ、約400ページほどの文庫本をあっという間に読破した。こんなに気持ちの良いどんでん返しを味わったのは久々だ。

 

騙された!でも気持ちが良い!

 中でも印象深いシーンは、白鳥翔の彼女である立花広美が殺害されるシーンである。本書では、主人公の山本安雄、そして盗作者である白鳥翔の視点が交互に入れ替わりながら物語が進んでいく。山本の行動、白鳥の行動を交互に説明しつつ、読者を罠にはめ込んでいく。立花の殺害シーンでも、白鳥が死体を発見した時、私は訳が分からなかった。山本が殺したわけではないのはわかっている。じゃあ誰が・・・?

 

 そこの答えがこの物語の全てをひっくり返した。

 

 ある意外な人物の登場に私もまんまと騙されてしまった。

 

「盗作」と「倒錯」の連続

 「幻の女」の「盗作」により、2人の戦いが始まり、その中であらゆることをきっかけにそれぞれの立場が「倒錯」する。そして何よりも面白いのは、「盗作」「倒錯」の連続により、2人の闇の部分がどんどん深みにはまっていき、追い込まれていくにつれてみるみるうちに人格が邪悪なものへと変化していく様である。普通の何気ない日々を暮らしていた人間が、一回の犯罪をきっかけにどんどん悪に手を染めていく、そんな人間模様を折原一は非常に丁寧に描いた。さすがは叙述トリックの名手」である。

 

小説全体が物語!

 小説の最後を飾る解説部分。普通、小説の解説部分は他の人間がその小説についての感想であったり簡単なあらすじを書くものが多い。しかし本書では、著者自らが解説を記している。

 そしてもっとすごいのは、その解説部分までも物語の一部に組み込んでいるところである。これには私も驚いた。本編だけでも十分翻弄されたが、まさかこんなところでも・・・。

 

 文庫本一冊全てをトリックで巻き込んだ「倒錯のロンド」、是非とも一読してほしい。

 

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